“争族”を防ぐには?生前の家族会議のすすめ

“争族”を防ぐには?生前の家族会議のすすめ

はじめに

相続が「争族」になってしまう――。近年、相続にまつわるトラブルが後を絶ちません。親族間の仲が良かったはずなのに、相続をきっかけに関係がこじれてしまうケースも珍しくありません。こうした悲しい事態を防ぐ有効な方法のひとつが「生前の家族会議」です。

今回は、相続トラブルの実態と、生前の家族会議がなぜ有効なのか、どのように進めればよいのかを詳しく解説します。

増え続ける相続トラブルの実態

裁判所の統計によると、相続を巡る遺産分割事件の件数は年間1万件を超え、年々増加傾向にあります。特に家庭裁判所に持ち込まれる相続紛争のうち、遺産額が5000万円以下の事案が半数以上を占めており、決して資産家だけの問題ではありません。

またトラブルの原因は様々です。
財産の分け方を巡る意見の相違
・遺言書がない、または不備がある
・特定の相続人への生前贈与が他の家族に不公平感を生む
・親の介護にかかった労力の評価を巡る対立
これらの背景には、家族間のコミュニケーション不足や、生前に公平な相続を想定して対策をしていなかった場合も少なくありません。

「争族」を防ぐカギは「生前の話し合い」

相続が「争族」になってしまうのは、残された家族が故人の意思や考えを正しく把握していないケースが多いからです。親が「きっとわかってくれるだろう」と思っていても、実際には相続人の間で解釈が食い違い、結果的に感情的な対立に発展してしまうことがあります。

こうしたリスクを減らすために有効なのが、生前の家族会議です。親が元気なうちに家族全員で相続について話し合うことで、以下のような効果が期待できます。

・親の考えや希望を明確に伝えられる
・相続人間での認識のズレを早期に解消できる
・財産の全体像を家族が把握できる
・介護や扶養の分担についても事前に合意ができる
・遺言書作成の参考になる

家族会議の進め方とポイント

① 早めのタイミングで開催する
健康状態が良好なうちに開催することが理想です。高齢になり判断能力が低下してからでは、家族会議そのものが難しくなることもあります。

② 家族全員の参加を促す
できる限り相続人全員が出席する形で開催します。配偶者や子どもたち、必要に応じて孫世代も参加してもよいでしょう。誰かが蚊帳の外に置かれると、後々不信感を生みやすくなります。

③ 専門家の同席も有効
税理士、弁護士、司法書士、行政書士など専門家の同席を依頼することで、法的・税務的な疑問にもその場で答えられ、具体的な対策を検討しやすくなります。

④ 議題を整理しておく
あらかじめ以下のようなテーマを整理しておくとスムーズです。
・財産の全体像(預貯金・不動産・株式・保険など)
・借入や保証債務の有無
・介護や扶養に関する希望
・葬儀・お墓・法要の希望
・遺言書の有無と内容

⑤ 感情に配慮した進行を
相続の話はデリケートなテーマです。親が「まだ元気なのに」と感じる場合もあるため、言葉選びや進め方には配慮が必要です。「家族が円満でいるために、今から考えておきたい」という前向きな目的を共有することが大切です。

家族会議の後にすべきこと

家族会議の結果をもとに、以下のような準備を進めておくと安心です。

遺言書の作成
公正証書遺言で残しておくと、法的な効力が高くなります。
・生前贈与の検討
贈与税の非課税制度なども活用しつつ、事前に一部財産を分けておく方法もあります。
納税資金の準備
相続税が発生する場合に備えて、納税資金の確保方法も確認しておきましょう。
不動産が相続財産の大部分となるケースなどは要注意です。
財産目録の整理
万一の時に備え、どこに何の財産があるのかを家族が把握しやすい形で整理しておくことも重要です。

専門家への相談をためらわない

相続は法律・税・感情が絡み合う複雑な問題です。自己判断だけで進めようとすると、逆にトラブルの火種を作ってしまうこともあります。早めに専門家に相談し、中立的な立場でアドバイスをもらうことが、家族の円満を守る大きな力となります。

まとめ

「争族」を防ぐためには、元気なうちから家族で率直に話し合いをしておくことが非常に大切です。生前の家族会議は、単なる財産分けの話ではなく、家族の絆を確認し合い、思いやりを形にする貴重な機会でもあります。ぜひ前向きに検討してみてはいかがでしょうか。
また子供の側からは中々話し合いの場の提案は難しいものです。親側からの積極的な声がけが良いかもしれませんね。