「相続税・贈与税の一体化」について
「相続税・贈与税の一体化」について
Q 最近、「相続税・贈与税の一体化」ということをよく聞くようになりました。
年110万円の贈与税の控除は、なくなってしまうのでしょうか。
A 2021年12月に発表された「令和4年税制改正大綱」に記載され、(同様の記載が近い将来
「相続税・贈与税の一体化」に踏み切ろうとする国側の強い姿勢がうかがえます。贈与で財産
を取得しても、相続で財産を取得しても税額は同じにしましょうということです。
【 解 説 】
1.「令和4年税制改正大綱」相続税・贈与税のあり方
与党の税制調査会(以下、税調)は今回、税制改正の基本的な考え方の項目で「相続税と贈与税の一体
化」に触れています。実際、改正前から与党税調会長は「資産移転を公平にすべきだ」とし、暦年課税制
度の見直しに意欲を示していました。
これまで国は、贈与税制度を緩和させ、日本経済の活性化につなげようとしていました。教育資金や結婚・
子育て資金の非課税 贈与制度の創設もその一つで、高齢者が保有する金融資産を若い世代に移転
させ、消費を刺激しようとしていたのです。かつての様子を振り返ると、政府は急に方針転換をしたかのよう
に見えますが、前々回・前回の税制改正大綱から言及されていました。
一昨年から大綱の基本的考え方には『現行の相続時精算課税制度と暦年課税制度のあり方を見直す』『資
産移転の時期に中立な税制を構築』といったことが書かれています。大綱に書かれている以外にも、かなり
以前から税調はこういった議論を続けています。
今回、相続税・贈与税の根本的な改変は行われなかった一方、贈与税の非課税制度の一部が改正されま
した。背後には、経済対策だけでなく富裕層優遇の批判をかわしたい狙いがあるようです。
2.まとめ
相続税と贈与税の一体化が実現すると資産移転時によって税負担は変わらず中立的な税制となります。これ
は、これまで最も活用されていた生前贈与による相続税対策が使いづらくなることを意味します。
現時点では改正について具体的な内容や時期は明らかになっておりませんが、最も早くて2022年(令和5年)税
制改正大綱に記載され、2024年1月以後の相続に適用開始という流れが想定されます。
それまでは生前贈与の対策は有効ですので、生前贈与を積極的に活用されてはいかがでしょうか?
どのような改正となっていくのか、今後の動向に引き続き注視していく必要があります。